行基と山代温泉

【 行基・伝説 】−神亀２年（７２５）、行基菩薩が霊峰白山に修行を行う為に足を速めていた際、遠くに紫雲が棚引いていたのが目に留まり近寄って見ると、そこに傷ついた烏（足が３本ある霊鳥、八咫烏と思われます。）が湯浴びをし傷口を癒しているのを発見しました。行基が手をつけてみると温泉である事が判り、自ら温泉の守護仏である薬師如来像を彫刻し一宇を設けて安置、この事を住民に告げて去っていった事から「からすの湯」と呼ばれるようになったと伝えられています。因みに白山は標高２７０２ｍの霊峰で、養老元年（７１７）に修験道の高僧として知られる泰澄上人によって開かれると信仰は全国に広まり富士山、立山と共に日本三霊山に数えられました。本社の１つである白山比�盗_社（石川県白山市）には神亀２年（７２５）に白山山頂で行基と泰澄上人と出会い、白山妙理大権現について語り合い、極楽での再会を誓いあったと伝えられています。

※白山比�盗_社は紀元前から存在するとされる事から、白山を霊山として崇める古代人達の素朴な祭祀場を起源としていると思われます。養老元年（７１７）に泰澄上人によって白山が開かれると、本格的な信仰となり翌年には山頂に白山比�盗_社の奥宮となる祠が設けられています。時代が下がると、白山の山頂へ通じる、加賀馬場、越前馬場、美濃馬場を拠点とする３つの経路が確立し、その加賀馬場の中心的な役割をもったのが白山比�盗_社で、格式が高く、延喜式神名帳に式内社として記載され、加賀国一之宮として、白山信仰を行う一方で加賀国の催事を執り行う立場となりました。白山比�盗_社は戦国時代に一向一揆により荒廃しましたが、加賀藩主前田家の尽力により再興され、明治時代には白山比�盗_社が白山信仰の本社として認められています。

【 行基・実・年表 】−神亀元年（７２４）、和泉国大鳥郡（大阪府和泉市）に清浄土院（高渚寺）とその尼院を建立。神亀２年（７２５）、河内国交野郡（大阪府交野市・枚方市）に久修園院を起工。神亀３年（７２６）、和泉国大鳥郡（大阪府和泉市）に久修園院を起工。神亀４年（７２７）、和泉国大鳥郡（大阪府和泉市）に大野寺とその尼院を起工。

【 場　　所 】−石川県加賀市

【 概　　要 】−上記のように行基菩薩と白山信仰が結びついた為、行基菩薩が設けた草庵は白山信仰の拠点となる白山五院の筆頭、薬王院温泉寺として発展を遂げ、最盛期には最盛期には末社、別院数百坊を擁する大寺院となりました。その後、衰微しましたが寛和・永延年中（９８５〜９８８年）に当地を訪れた花山法王が再興に尽力し、明覚上人に命じて薬王院温泉寺を中興開山させ、境内には七堂伽藍が整備されたそうです。山代温泉の名声が広まると戦国時代には当時は朝倉家の家臣だった明智光秀が１０日間湯治治療を行い、その時の様子が「明智軍記」に記載されています。江戸時代に入り大聖寺藩（石川県加賀市：本城−大聖寺陣屋）の領内になると藩主前田家が保養所として整備し、藩主の御殿湯も設けられています。明治時代以降は文人墨客から愛され、特に与謝野晶子と北大路魯山人が大きく関わっています。

【 行基・周辺・史跡 】−薬王院温泉寺（石川県加賀市：行基が薬師如来像、日光菩薩像、月光菩薩像、十二神将像を彫刻し一宇を設けて安置）・薬師山医王寺（石川県加賀市：行基が開創）・山中温泉（石川県加賀市：行基が発見）