全くの素朴な疑問ですが、日本三御湯を説明する文章に「犬養御湯又は三函の御湯」という表現をよく見かけます。三御湯の根拠は第84代天皇である順徳天皇が編纂した「八雲御抄」に9箇所の温泉が紹介され、その内の3箇所に「御」の字が前に付けられた事に因んでいるとされます。それならば、その3つ温泉名は明白なはずなのに、何故「又は」と付くのでしょうか?私が調べた限りでは「八雲御抄」の9箇所の温泉とは「あしがりのゆ」、「ななくりのゆ」、「ありまのいでゆ」、「しなののみゆ(ななくりと同所也)」、「いよのゆ」、「なすのゆ」、「なとりのみゆ」、「つかまのゆ」、「いぬかひのみゆ」なので、三函の湯は出てきていません。別の資料である藻鹽草(五水邊)には「伊豫温」、「有馬温」、「走温」、「那須温」、「犬飼御温」、「筑摩温」、「七久里温」、「蘆苅温」、「ましらこの浦の走温」、「かつまたのみ温」、「まくまのゝ温」、「御熊野温」、「さはこの御ゆ」、「名取御温」とあり三函の湯が登場します。足して考えると「犬飼御温(いぬかひのみゆ)」と「名取御温(なとりのみゆ)」が「御湯」としては両方に記載され「しなののみゆ(七久里温)」は「八雲御抄」では「御湯」、「藻鹽草」では単なる「湯」として表現され、「さはこの御ゆ」は「藻鹽草」のみという事になります。そうすると日本三御湯とは「犬養御湯、名取御湯、信濃御湯又は三函の御湯」と表現するのが正しいのかも知れません。
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